仰ぎ見れば生きる
民数記２１：１－９
奴隷として使役されていたイスラエルの民は、モーセに導かれてエジプトから救い出され、約束の地カナンを目指した。そして、40年後にカナンに入った。その間の約39年の荒野の旅を記録したのが本書だ。
厳しい旅だった。民は度々不信仰になり、神の恵みを忘れた。子羊の血によって出エジプトをするという、驚くべき神の贖いの御業を見たのに、彼らはすぐに恵みを忘れ、シンの荒野で肉が食べたいと言った（出16:2,3）。それに対して神はマナを降らせられた。続いて彼らは、レフィディムで水が苦いと不平を言った（同17:2,3）。神はなお忍耐され、岩から清水を出させられた。さらに彼らは、キブロテ・ハタアワで再び肉が食べたいと言った（民11:1-6）。
人間とは何と弱い者か。恵みを忘れ、ちょっとした試練に不平不満を言う。しかし、憐れみ深い神は、彼らの重なる不信仰に対し、その都度恵みをお与えになった。
しかしここで、ついに神は怒りを発せられた。食物がない、水がない、マナに飽きたと再びつぶやく民に、神は火の蛇を送られた（6節）。激痛が民を襲い、大量の死傷者が出た。ここに至って、民はやっと自分たちの罪に気づいた。それも、自分たちが犯した罪は、神に対するものだと気がついたのだ（7節）。
悔い改める彼らに、神はモーセを通して救いの方法を示された。それは、青銅の蛇を旗ざおの上につけることだった。蛇退治でも解毒剤の投与でもなく、青銅の蛇を仰ぎ見るだけだ。いかに傷ついた者も瀕死の者も、旗ざおの上に高々と掲げられた青銅の蛇を仰ぎ見さえすれば生きたのだ。
この青銅の蛇こそ、我らの主イエス・キリストだ。イエスがニコデモに語られた通りだ（ﾖﾊ3:14）。キリストは、我らの罪のために呪いの蛇となって十字架にかかられた。主は呪われるべき御方などではなく、罪なき神の子だった（1ﾍﾟﾃ2:22）。神はその御子を、呪われるべき罪人の我らを救うために、呪いの木と言われた十字架（ｶﾞﾗ3:13、申21:22,23）にかけられたのだ（2ｺﾘ5:21）。
我らの罪は、火の蛇の猛毒のようなもので、我らを苦しませ、悩ませ、ついに死に至らせる。魂の死、滅びだ。救いの道はただ一つ、十字架のキリストを仰ぎ見るだけだ。罪を悔い改め、十字架わがためなりと信じれば、だれでも罪が赦され、救われる。罪過と罪の中に死んでいた者が、生きる者になるのだ。
さらにキリストの救いは、罪の赦しのみか、一切の汚れからの潔めまで与える。すぐに自己弁護し、自己憐憫に走る古き人、突き詰めれば自分が一番かわいい肉の性質を抱え込んだままでは、終わりの日に主の前に立てない。それは滅びることを意味する。イザヤは主の栄光を見たとき、「わざわいなるかな、わたしは滅びるばかりだ」(ｲｻﾞ6:5(口))と嘆いた。
しかし、感謝すべきかな。新約時代に生かされている我らには、全き救いが完成している十字架がある。汚れた古い自分がキリストと共に十字架に死に、復活のキリストを内にお迎えし、キリストが内に生き給うという信仰によって生きる者になる。
仰ぎ見る者は誰でも救われる。仰ぎ見る者は必ず潔められる。これが福音だ。十字架は我らの前に立っている。仰いで救いをいただこう。仰いで聖潔（きよめ）をいただこう。神は我らに恵みを与えたいと願っておられる（1ﾃﾓ2:4、1ﾃｻ4:3）。この新しい年、十字架を仰ぎ見て進んで行こう（ｲｻﾞ45:22）。